NEMOGRAPHY

在ロンドンのフォトグラファー/ライターのNemoが最近気になるコト、好きなモノなどをご紹介。不定期更新!

ダブル草間彌生

ロンドンから送る…と謳いながら、まだ日本に一時帰国中。

ようやくひねり出した1人タイムを利用して

大阪・国立国際美術館で開催中の「草間彌生 永遠の永遠の永遠」展へ。

実はロンドン出発前の3月、ロンドン・テートモダンで彼女の大規模な回顧展覧会を鑑賞してきたばかり。

それほど間があいていなかったせいもあり、ロンドンと大阪、両エキシビションでの展示や観客、美術館側のスタイルが比較できて面白かった。

(※撮影禁止のため写真はすべて借り物です)

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ジョージア・オキーフとフリーダ・カーロ。

ずーっと昔、初めて草間彌生のポートレート写真を目にした時に連想したのがこの2人の女性。彼女の作品については数年後まで知らないままだった。

「彼女達の見る世界は自分の見ている世界と全く違うに違いない」と、なぜか羨望に近い思いを抱いたのを覚えている。そういえば村上龍の監督した映画『トパーズ』で、アブない目つきをした占い師役で出演していた記憶がある。

「水玉の女王」なんてポップな呼称を付与されている彼女だが、キャス・キッドソンあたりの可愛らしいポルカドットとは一線を画す目眩を催す無限の水玉(←円状斑点と呼びたい)と編み目模様が彼女のモチーフ。

幼少の頃から総合失調症に病み、その幻覚を描き留めたという草間。彼女の作品を一言で表現するとしたら「オブセッション(強迫観念)」。あまりのストレートさに直視をためらったり不快感を催す事も。増殖するドット&アミアミの世界に呑み込まれてしまいそうだ。

さて、3月前半に行ったロンドンの大回顧展。広く知られる水玉模様やカラフルな球状の立体作品だけでなく、少女時代の作品に始まり、ミニマリズムから前衛アートまで様々なスタイルに挑戦したアメリカ時代、そして帰国後の活動の表現スタイルの変遷を時代の流れに沿って追う構成。ヌードの男女に動物、水面にまで水玉模様を描きまくるという、前衛作家として活躍したニューヨーク時代の映像作品も上映(ちなみにお子様にはおススメできません)。

そして近年の平面作品が展示されている部屋を抜けると、最後に鏡で覆われた暗い室内を無数の電球で照らす「無限の水玉ルーム(勝手に命名)」が。しばしコトバを失い宇宙空間に浮かんだのち、テムズ河を見下ろしながら一息。「すごいところに行ってきたな。一体何時間いたんだろう」と思ったが、時計を見たらトータル1時間半程度だった。

ところかわって大阪・国立国際美術館。こちらはいまだ精力的な創作活動を続ける彼女の最新作を集めて紹介する内容。ビビッド&カラフルな作品群とモノクロの線画群が中心。回顧展の後だったので、「1人の作家がこんなに変わって行くのか」とテートの続き気分&お得気分を味わう。

こちらにもトリに「水玉小屋」。しかし係員に案内されて室内に入り10秒経ったかたたないかの内に外に出るよう促され唖然とする。目玉作品として各メディアに紹介されていたのかもしれない。多少の行列もあった。それにしてもあまりに慌ただしいあのベルトコンベア式鑑賞は…いただけない。

展示自体も頻繁にドアを開閉するため、そのたびに外の光と行列が鏡に映り込み台無しに。鑑賞時間の強制も含め「無限を感じるんとちがうんかい?!」と不満が残った。

同じドアから出入りではなく、向こう側に抜ける形にすればよかったのにと思う。そうすれば問題はかなり解決するはず。同展覧会より早くにスタートした大回顧展版では、部屋の向こう側から出る一方通行になっており外光も遮断されていた。なぜしなかったのか。スペース的には問題ない筈なのに。

このエキシビションはこの後、埼玉県立近代美術館〜松本市美術館〜新潟市美術館と巡回予定とのこと。水玉ルームの展示デザイン&展示方法が少しでも改善されるといいのだが。

天才と狂気の狭間で作品制作を続ける彼女。世界的な前衛作家として知られる彼女。現在83歳。

日本ではTVドキュメンタリー番組の影響か、はたまた自分の作品を見て「私って天才!」とお茶目に言い切ってしまう姿が幾度もメディアに登場したためか、近年「尋常でない目つきをした、スゴいゲージツ家のおばあさん」「ポップな水玉ばあさん」といった認識で美術愛好家以外にも知名度が上がっている様子だ。

アーティストにスポットライトがあたる事は喜ばしいことだと思いながらも、ミュージアムショップで水玉グッズに群がるすごい人だかりを見ながら、彼女がメディアに妙な祭り上げ方をされているんじゃないかと余計な心配をしてしまった。

まあ単に春休みで混んでいただけなのかもしれないが。

余談だがテートモダンでは作品へのオマージュとして水玉着用の鑑賞者が多かったのが印象的だった。

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投稿日: 2012/04/14 投稿者: カテゴリー: see タグ: , , ,

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